吉敷地域の防災

被災したときに避難所に行ったらどのようにすればよいのか

2017/4/5

被災したときに避難所に行ったらどのようにすればよいのか

平成29年3月20日(月)に,山口県セミナーパーク大研修室で山口県自主防災会組織交流大会が開催され,吉敷地区防災会と上東地区自主防災会から合計3名の役員が一般社団法人「減災・復興支援機構」専務理事の宮下加奈氏から,自主的な避難所の運営について教えていただきました。以下に,その研修でお教えいただいたことをまとめてみました。

もし,台風などで早めの避難をしたときや災害により住宅が倒壊したときに,私たちは避難所に行って急場をしのがなければなりません。この避難所で,私たちは被災者どうしで助け合って一時的に生活します。災害救助法では,避難所の開設期間は開設から最大7日間と定められています。この間に仮設住宅に入居するか自宅の再建をすることになりますけれども,実際には数週間から数ヶ月にわたって避難所に居住しなければならないこともあるそうです。避難所は,原則的に市町村長が避難所担当職員を派遣して開設することになっているそうです。しかし,突発的な災害が発生したときには,施設管理者,自治会長,自主防災会の代表者などが避難所として指定されている施設のカギを開錠して開設しなければならない場合もあるそうです。

災害時に円滑に避難所を開設するためには,学校などの施設関係者,担当職員,住民代表などで協議会をつくり,カギの借用方法,施設内の重要な部屋の立ち入り禁止区域,借用できるスペースなどについて事前に話し合っておかなければなりません。

避難所の運営には次のような注意点があるそうです。

(1)避難所は避難者どうしが相談して運営することになる。市町村の行政職員には,通常業務に加えて罹災証明書発行や,災害からの復旧に向けた国や県への申請手続きなどの業務で働いてもらう。

(2)みんなで話し合って避難所の住民の中から避難所の代表を決め,避難所を運営する規則を決める。

(3)学校などの避難所に入ったら,まず学校の管理運営上重要な校長室,職員室や危険な薬品などがある理科室などを学校側と相談して立ち入り禁止区域とする。

(4)多くの場合避難所として体育館を利用することが多いので,体育館の正面玄関付近の教室を借りて本部室とする。

(5)本部室の近くにボランティア本部室を設置する。

(6)保健室を借りて医務室とし,その近くに休憩室となる部屋を見つける。

(7)体育館内のステージを救援物資置き場にして,物資をみんなの目の届くところに置いておく。盗難防止と物資配分のときに不公平感が生じないようにするためである。

(8)体育館の正面玄関近くの壁面を掲示板にして,避難者に情報を提供する。内容で分類して掲示する。同じ内容の場合には,古い情報の上に新しい情報を掲示し,過去にさかのぼって閲覧できるようにする。

(9)体育館の正面玄関付近にテーブルを置いて受付とする。

(10)どこか1つの教室を授乳室として設定する。暗幕がある視聴覚室などが最適である。安全のために2人以上で利用し,できれば内側から施錠して使う。

(11)仮設電話は正面玄関付近に設置する。

(12)避難直後のトイレは1階に限定する。トイレに流す水は,みんなで協力してプールなどから汲んできて,常備しておく。施設内に下水管の損傷がないことがはっきりした段階で2階より上の階のトイレを利用開始する。

(13)仮設トイレは校舎の近くのあまり目に着かない場所で,バキュームカーが入れる場所かつ清掃用の水場に近い場所にする。

(14)ペットを連れてきた人がいた場合には,鳴き声が迷惑にならないように校舎から離れたグラウンドの一角の雨の当たらない場所にする。イヌのリードをつなぎやすいジャングルジムや鉄棒の近くに雨よけのスペースを作るとよい。

(15)喫煙所は,各所の校門付近に設置し,不審者の侵入を防ぐために見張り番の業務を兼ねてもらう。

 

次に,避難所の居住場所について注意すべき点を教えていただきました。

(1)体育館などの避難所は,できるだけ静かな環境となることが望ましい。

(2)高齢者や身体の不自由な人などは,できれば和室やイスのある部屋などの体に負担が生じないような場所に居住してもらうように配慮する。

(3)広い体育館で避難者の占有空間の割り当てをするときには,まず,通路を確保することが必要である。

(4)通路を確保した後,居住空間の割り当てをする。最低でも一人当たり1メートル×2メートルの占有空間を確保する。

(5)玄関に近い広い通路のそばには,高齢者や歩行の困難な人やその家族に占有してもらう。

(6)占有空間は,雑然となりやすいので,整理整頓に努める。近年は,ダンボールなどの間仕切りの救援物資が届くこともある。ベッドとして使えるダンボールが届くこともある。

(7)着替えをする空間は,ダンボールなどの間仕切りで囲う配慮が必要である。

(8)ダンボールが十分な量支給された場合でも,最初はダンボールで各戸の居住空間の区分けをせずに,避難した人の間で意思疎通が十分にできた段階で間仕切りをする。

(9)間仕切り用カーテンが救援物資として手に入った場合には,それを利用すると,時に応じてカーテンを巻き上げて風を通し,掃除をすることが可能となり,健康面で望ましい。

 

トイレ利用については以下の注意がありました。

(1)仮設トイレは,被災後すぐには設置されないので,設置されるまでは施設内のトイレを利用する。

(2)避難所となる建物の被害状況を確認した後,1階トイレの入口に「トイレの使用方法」の張り紙

を貼り,避難者に使用方法を徹底する。

(3)2階以上の階のトイレは,配管の被害状況の確認が済むまで「使用禁止」の張り紙を貼る。

(4)トイレに使用する水は,プールなどから汲み出すため,避難者に「バケツでの水汲み」をお願いする。

(5)なるべく早い時期に避難者どうしで当番を決めてトイレ掃除を実施する。

(6)高齢者や子供などは,仮設トイレの利用を敬遠するために,水や食事を控えることによって持病が悪化したり,免疫力が低下したりする。これらが原因の「災害関連死」を防止するために,洋式の仮設トイレなどの使いやすいものの設置を要請する。

 

高齢者や災害時要配慮者への対応について以下のように注意を受けました。

(1)要介護者には,普段から介護している人や事情を知っている人と一緒に居住してもらう。

(2)独り暮らしの人や避難所での生活が困難な人は,災害対策本部や地域包括支援センターなどと協議して,「福祉避難所」に移送することも検討する。

(3)段差が少なく,トイレが利用しやすい場所を優先的に居住空間として割り当てる。

(4)多目的トイレや洋式トイレがある場合には,優先的に利用できるように配慮する。

(5)薬,入れ歯,補聴器,メガネ等を持参しているかどうか確認する。「お薬手帳」も確認する。

(6)聴覚障害の人は,外見上,健常者と区別できないので,伝達事項などを伝えるときに配慮が必要である。

(7)年齢や見た目だけでは判断できない病気があることを念頭に置く。例えば,内臓疾患(高血圧,糖尿病,膀胱炎,人工透析,心臓病),オストメイト(人工肛門,人口膀胱保有者)などの問題をかかえている人に配慮が必要である。

(8)統合失調症,躁鬱病,パニック障害,適応障害,発達障害,知的障害などの人がいることも考慮に入れておき,必要に応じて個別の部屋を用意するなどの配慮が必要である。

(9)自分の病気を打ち明けることに不安を抱く人もいるので,避難所運営本部や医療関係機関と協議し,避難所内に医療相談コーナーを設置する。

 

ペットを連れてきた避難者への対応については次のような指導がありました。

(1)保健所や動物病院などで,災害時にペットを預かってもらえるところがあることを周知する。

(2)アレルギー症状の出る人もいるので,ペットを居住空間に入れることは困難であることを伝える。

(3)小さいペットは必ずケージに入れて持参し,エサは自分でやらなければならない。

(4)ペットは,屋外で雨の当たらない場所にペット用のスペースを設け,そこを飼育場所にする。屋内にスペースを確保できる場合には,そこを活用する。

(5)避難所生活が本格化したら,飼い主で当番を決めて対応することが望ましい。

(6)盲導犬や聴導犬などの介助犬が必要な人には,専用の部屋を用意してそこに居住してもらう。

防災広報委員 右田耕人

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