吉敷地域の防災
吉敷上東地区で行われた防災訓練
吉敷上東地区で行われた防災訓練
平成28年11月11日(金)8:00から,吉敷地区内の,上東地区自主防災会の実動訓練が行われました。吉敷地区には,地区全体の防災会と,その一部の地域である上東地区に自主防災会ができています。上東地区の自主防災会は,この地区でかつて自治会長をされていた土肥俊峯さんを中心とする多くの方々のご努力により,平成22年12月17日に認定され,発足しました。
その翌年度に図上訓練を,更に翌々年度の平成24年度からは実動訓練も行われ,年々異なる設定の下で図上訓練と実動訓練が実施されています。図上訓練は,実際に体を動かして避難や救出を行う実動訓練のリハーサルのようなもので,通常屋内で行います。訓練に参加する人が,地域のハザードマップを囲み,洪水や地震などの設定された災害の状況を把握し,その災害からの被害を最小限に食い止めるための行動について話し合う訓練です。この訓練で,避難行動の方針を細部まで煮詰めておき,それを基にして,実際に体を動かして避難所への避難誘導,傷病者の救助,応急救護,初期消火などを行うのが実動訓練です。
上東地区は,吉敷地区南部の東端に位置し,世帯数1,352戸,人口3,258人(平成27年9月30日時点)で,スーパーマーケット以外の商店は比較的少なく,農家と新旧住宅地などが混在した地域です。上東自治会は5つの区に分けて運営されています。地区全体で防災訓練を行うのは,大変な労力が必要となりますので,主要な活動を行う区を,年度によって変更して訓練しています。本年度は,吉敷上東3丁目の全域と2丁目の一部を含む,3区を主体として訓練することにしました。実動訓練に先立って,10月23日(日)に図上訓練を行い,実動訓練のときの行動について綿密に検討しました。そのとき立てた方針は,大型台風襲来による集中豪雨が発生し,河川氾濫と北部山脚斜面の崖崩れの危険性が高まったために出された「避難準備情報」を受けて,要援護者の早めの避難を実施するというものでした。避難準備情報の伝達については,3区については全戸に連絡し,1区,2区,4区,5区では各区の連絡員までの情報伝達をすることにしました。(平成28年度上東地区自主防災会連絡網参照)
11月11日(金)の朝8時に,上東地区自主防災会の会長,副会長,顧問,本部主任の合計6名の主だった役員が集まって会議が行われました。
そこでは,山口市災害対策本部から避難準備情報が出されたことを受け,上東地区自主防災会は,上東公民館に防災本部を設置し,8:30から本部会議を開催し,防災訓練として防災命令第1号(避難準備情報)を発令する運びとなりました。直ちに3名の副会長は,1区~5区の区長,自主防災会の各主任に,電話で,本部会議招集をかけました。本部主任は,本部付の役員等に招集をかけました。本部会議では,防災命令第1号に基づいて,現在の地域の状況,各役割分担などが確認され,避難準備情報の伝達と要援護者の避難誘導の準備が始まりました。(平成28年度実動訓練の構成参照)
9:00から1区~5区の区長は,連絡員へ避難準備情報を伝達しました。3区については,連絡員への情報伝達に引き続いて,全部の班長に情報伝達し,最終的には班内の各戸に情報を伝達しました。最後に情報を受けた人は,上東公民館の災害本部まで,情報伝達が完了した旨の報告を行いました。最後の報告が連絡されてきた時刻は10:17で,情報伝達に1時間以上もかかったことになります。情報伝達の過程では,留守宅や受信拒否の家もあり,さまざまなご苦労があったと聞いております。
要援護者の「早めの避難」を援助する実動班員の召集は,同じく9:00から始められ,9:30までに災害本部に班員が集合しました。車椅子と防寒用毛布を用意し,9:50に要援護者の救出に向かいました。救出経路は,地域の自然環境を日ごろから調べられている情報班の方々が,当日も現地調査され,その情報を受けて決定しました。要援護者宅から避難所への道のりは約400メートルで,健常者なら歩いて5分程度の距離ですが,例年の救出訓練の経験から,車椅子などの移動には20分間程度を要することが分かっております。要援護者の安全を考えると,ゆっくりと移動していただかなければなりません。合計4名の要援護者が,実際に避難所に到着された時刻は,10:20頃でした。
到着された要援護者の方々は,防災本部受付で避難者カードに,氏名,性別,住所,3区4班,電話番号等を記入されました。その後応急管理班の看護師の方々が,要援護者の方々の健康状態についての問診をいたしました。
10:40になると,日本赤十字社のボランティアの方々から,心肺蘇生法,胸骨圧迫法,AED使用法などを指導していただきました。並行して応急管理班は,非常食の準備を始めました。
11:20頃に上東第2公園へ移動し,山口市消防本部の消防官の方から,火災予防と消火器の説明をしていただき,消火器を使った初期消火の訓練を行いました。訓練参加者は,火炎を描いた的に向けて一斉に消火器の水をかけました。
再び会場を上東第2公園から上東公民館に移し,応急管理班員の方々が準備された非常食を味わいました。災害用に備蓄している非常食には賞味期限がありますので,期限切れになる前の避難訓練のときに賞味することにしております。非常食をおいしくいただいた後に,反省会を開きました。これは,避難訓練参加者から,問題点のご指摘を受けて,次回の避難訓練を改善するために必要です。参加者からは,防災会役員にとって耳の痛いことを含め,たくさんの貴重なご意見をいただきました。問題点としてご指摘いただいた主なものは,(1)地区内拡大状況図は床面に展開せずに,立て掛けて全員に見えるように配慮して欲しい,(2)主要訓練地区の3区の情報伝達に1時間17分もの長時間を要した,(3)地域の防災訓練と学校行事等と重ならないようにして欲しい,(4)トランシーバーの情報伝達で,各班の通話が混信して明瞭な交信が阻害された,(5)救出救護班や消火班の人員を確保するのが困難であった,(6)避難所の入口で混雑したために重篤者と健常者の入室が困難であった,などでした。これらを受けて会長から,今回の訓練の問題点を,次回の訓練では必ず改善するというご回答をいただきました。(写真は湯田克治さんが撮影してくださいました。)
こうした上東地区自主防災会の取り組みが、吉敷地区内の自主防災組織の立ち上げの参考になればと祈っています。
防災広報委員 右田耕人